「沖縄で涼しい家」とは?断熱性能と遮熱性能の違いを徹底解剖
沖縄で涼しい家を建てたい。そう考えたとき、最初に気になるのが「断熱性能」ではないでしょうか。
断熱材は厚い方がいい。UA値は低い方がいい。高断熱になればなるほど、夏も涼しくなる。
全国的に住宅の高断熱化が進んでいることもあって、そんなイメージを持っている方は少なくありません。
でも、ここで一つ考えてみたいことがあります。
北海道や本州の寒冷地と、沖縄。そもそも同じ考え方で住宅性能を決めていいのでしょうか。
沖縄の気候を数字で見ていくと、「涼しい家」に必要なものが少し違って見えてきます。
- 沖縄では、なぜ高断熱だけでは「涼しい家」にならないのか
- 断熱と遮熱は、そもそも何が違うのか
- 国の省エネ基準にも表れている「沖縄の特殊性」
- 沖縄で住宅性能にお金をかけるなら、何を優先するべきか
- 木造住宅と遮熱の相性をどう考えるか
沖縄は、実は「外気温との差」がそれほど大きくない
まず、断熱を考える前に沖縄の気温を見てみます。
室温の感じ方には個人差がありますので、ここでは説明のために室温25℃を一つの目安にします。
気象庁の1991~2020年の平年値では、那覇の7月の日最高気温は31.9℃。8月も31.8℃です。
一方、1月の日最低気温は14.9℃。
31.9℃
室温25℃との差は約6.9℃
14.9℃
室温25℃との差は約10.1℃
※あくまで月ごとの平年値を使った比較です。実際の気温は日によって上下します。
もちろん、沖縄にも33℃、34℃になる日はありますし、冬に10℃台前半まで下がる日もあります。
それでも、本州の内陸部や寒冷地のように、真夏は35℃を大きく超え、冬は0℃を下回るような地域と比べると、室内と外気の温度差は比較的小さい地域です。
断熱は、この「室内と外の温度差」によって移動しようとする熱を抑えるためのものです。
温度差が30℃ある地域と、10℃前後の地域では、当然ながら必要とされる断熱の考え方も同じではありません。
本土で必要とされる高い断熱性能を、そのまま沖縄にも当てはめればいいのでしょうか。
それでも沖縄の夏は暑い。なぜ?
ここで素朴な疑問が出ます。
「外気温との差がそこまで大きくないなら、なぜ沖縄の家はこんなに暑く感じるのか?」
大きな理由の一つが、日射熱です。
太陽に照らされた屋根や外壁は熱を持ちます。窓から直射日光が入れば、その日射エネルギーも室内へ入ってきます。
外の空気が32℃だから暑い、という話だけではありません。
太陽から家そのものが熱を受けている。
沖縄の住宅では、ここを無視できません。
実際、国土交通省の沖縄向け省エネ住宅資料でも、夏期の住宅について、最も重要なポイントとして日射熱を室内へ侵入させないこと、日射の遮熱対策を行うことが挙げられています。
↓
屋根・外壁・窓が熱を受ける
↓
室内へ熱が入る
↓
エアコンがその熱を外へ捨て続ける
だから、沖縄で冷房負荷を抑えるなら、
「入ってきた熱をエアコンで処理する」前に、「そもそも熱を入れない」
という発想が大切になります。
ちなみに沖縄の夏は湿度も高く、那覇の平年値では6月の平均相対湿度が83%、7月・8月も78%です。
沖縄の「暑さ」は、気温だけでなく日射と湿度も一緒に考える必要があります。
断熱は「魔法瓶」、遮熱は「日傘」
ここで、断熱と遮熱の違いを整理します。
熱を伝わりにくくする。外と室内の温度差によって熱が移動するのを抑えます。
イメージは「魔法瓶」
太陽の熱を、そもそも受けにくくする。庇、軒、窓の配置、ガラス、ルーバーなどで日射熱の侵入を抑えます。
イメージは「日傘」
真夏に外を歩く場面を想像すると分かりやすいかもしれません。
気温が同じ32℃でも、炎天下に立つのと、日陰に入るのとでは体感はかなり違います。
住宅にも似たことが起きています。
もちろん断熱は必要です。ただ、沖縄で「断熱材を厚くすれば、その分だけ涼しくなる」と考えるのは少し単純すぎます。
魔法瓶をひたすら分厚くする前に、まず日傘をきちんと差す。
これが、沖縄の住宅性能を考えるときの大きなポイントです。
実は、国の基準を見ても「沖縄だけ違う」
この考え方は、私たちだけの持論ではありません。
国の住宅性能基準を見ると、沖縄などの8地域は、他の地域とは少し違う扱いになっています。
住宅の外皮性能には、大きく二つの指標があります。
建物の内外で熱がどれくらい移動しやすいかを見る指標。一般的に「断熱性能」と聞いてイメージしやすい数字です。
ηAC(イータ・エー・シー)
冷房期に、太陽の日射熱がどれくらい住宅へ入りやすいかを見る指標です。
そして8地域では、断熱等性能等級4・5・6について、UA値の基準値が設定されていません。
一方、ηACには明確な基準があります。
| 断熱等性能等級 | 8地域のUA値 | 8地域のηAC |
|---|---|---|
| 等級4 | ― | 6.7以下 |
| 等級5 | ― | 6.7以下 |
| 等級6 | ― | 5.1以下 |
かなり特徴的です。
全国では「UA値がいくつか」という話をよく耳にしますが、沖縄8地域では、そのUA値に等級の基準値自体が置かれていません。
その一方で、日射の入りやすさを見るηACには基準がある。
さらに等級4とZEH水準に対応する等級5では、ηACがどちらも6.7以下。等級6になって初めて5.1以下になります。
沖縄では、熱を逃がさない性能だけでなく、「日射熱をどれだけ入れないか」を見る必要がある。
ただし、ここは誤解しないでください。
「UA値の基準がない=沖縄では断熱材がいらない」という意味ではありません。
8地域向けの仕様基準でも、屋根・天井などには断熱材の熱抵抗値が定められています。
必要な断熱は必要です。
ただ、断熱材を何層にも増やし、ひたすら数値を追うことが、沖縄の住宅で最優先なのか。それは別に考えた方がよいでしょう。
2025年の「省エネ基準義務化」も、ここを知ると見え方が変わる
2025年4月から、原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました。
大きな制度変更ですが、2025年になって沖縄の気候や住宅性能の考え方が突然変わったわけではありません。
それまで存在していた省エネ基準に、原則すべての新築住宅が適合することを求められるようになった、というのが大きな変化です。
「省エネ基準適合住宅だから、沖縄でも十分に涼しい」
と名前だけで判断せず、中身を見ることが大切です。
では、沖縄の冬が寒く感じるのはなぜ?
もう一つ、沖縄ならではの話があります。
冬です。
気温だけを見ると、那覇の1月の日最低気温の平年値は14.9℃。本土の寒冷地ほど低くありません。
それでも沖縄の冬は、思った以上に寒く感じる日があります。
一つの要因が風です。
気象庁の平年値では、那覇の1月の旬平均風速はおおむね5m/s前後あります。
風が強くなると体表から熱が奪われやすくなり、屋外では実際の気温より寒く感じます。
住宅でも、隙間風や窓まわりの冷気、室内の気流は体感に影響します。
ですから冬の快適性も、
断熱材を増やす
=
すべて解決
とはいきません。
窓、気密、風の入り方、間取り。その家全体で考える必要があります。
夏も冬も、沖縄では「断熱性能という数字一つだけでは住み心地を説明できない」ということです。
木造住宅と「熱をため込まない」という考え方
沖縄では長くRC造住宅が主流でした。
台風への強さなど大きなメリットがある一方、コンクリートには熱容量が大きいという特徴があります。
日中に強い日射を受けると、その熱を躯体に蓄え、条件によっては夜まで熱の影響が残りやすくなります。
国土交通省の沖縄向け資料でも、RC造について、コンクリートの熱容量の大きさによる日中の日射の蓄熱が沖縄での課題の一つとして挙げられています。
一方、木造はRC造と比べて躯体の熱容量が小さい構造です。
私たちが木造と遮熱の組み合わせを重視する理由の一つも、ここにあります。
↓
入った熱を必要以上にため込まない
↓
必要な断熱をする
↓
エアコン・除湿を効率よく使う
もちろん、「木造なら自動的に涼しい」わけではありません。
西日が大きな窓から入り、屋根への日射対策もなく、日射遮蔽を考えていなければ、木造でも暑い家になります。
大切なのは構造の名前ではなく、木造の特性を活かしながら、その土地で日射をどうコントロールするかです。
では、「沖縄で涼しい家」とは?
ここまでの話をまとめると、私たちが沖縄の住宅で考えたい順番はシンプルです。
日射を入れない
庇、軒、窓の方角や大きさ、Low-Eガラス、ルーバー、屋根の日射対策などを考えます。
熱をため込みにくくする
構造や仕上げを含め、日中に受けた熱を夜まで抱え込みにくい住宅を考えます。
必要な断熱をする
断熱をなくすのではありません。沖縄の気候と建物に対して、必要十分な性能を持たせます。
冷房・除湿を効率よく使う
高温多湿の沖縄では、温度だけでなく湿度も含めて設備計画を考えます。
その土地に入ってくる日射を読み、熱を家の中へ入れにくくし、必要以上にため込まず、必要な分だけ断熱する。
その組み合わせが、沖縄の気候に合った住宅性能だと私たちは考えています。
「吹付断熱をもっと厚くすれば、高性能になります」
そう言われると、性能が上がるなら良いことのように聞こえます。
もちろん、断熱性能を高めること自体が悪いわけではありません。
ただ、その追加費用を使うなら、
・深い庇や軒
・屋根への日射対策
・日射取得の少ないガラス
・効率のよい冷房・除湿
・その土地に合った建物配置
に使った方が、沖縄の住み心地に効くケースもあります。
住宅性能は、「数値が高いほど正解」ではありません。
その地域で何に困るのかを知り、そこへ必要な性能を配分することが大切です。
「この土地なら、どこから熱が入る?」から考えます
同じ沖縄でも、土地の向き、隣家の位置、道路、窓の取り方によって、家が受ける日射は変わります。
だから沖愛ビルドでは、単に「断熱等級はいくつにしますか?」というところから家づくりを始めません。
どの方角から日射を受けるのか。
どこに窓が必要なのか。
どこを庇で守るのか。
どこまで断熱性能を持たせるのが合理的なのか。
土地・間取り・住宅性能を一緒に見ながら考えていきます。
「吹付断熱はどこまで必要?」
「木造って本当に沖縄で涼しい?」
「等級5・6にすると何が変わる?」
「自分たちの土地なら、どんな暑さ対策が必要?」
一般論ではなく、自分たちが建てる家の場合で確認してみたい方は、一度ご相談ください。
※気温・湿度は気象庁の1991~2020年平年値を使用しています。実際の気象条件は年・日・地域によって異なります。
※本記事でいう「遮熱」は、主に建築計画上の日射遮蔽・日射熱取得の抑制を分かりやすく表現したものです。
※8地域にUA値の等級基準値が設定されていないことは、断熱材が不要であることを意味しません。仕様基準では屋根・天井等に断熱材の熱抵抗値が設定されています。
※住宅の温熱環境は、断熱・日射遮蔽だけでなく、気密、換気、湿度、設備、窓、建物形状、暮らし方など複数の条件によって変わります。
- 気象庁「那覇(沖縄県)平年値 1991~2020年」
- 国土交通省「住宅の省エネルギー設計と施工 8地域版」
- 国土交通省「省エネ性能に係るさらなる上位等級(戸建住宅の断熱等級6・7)の基準」
- 国土交通省「木造・RC造戸建住宅の仕様基準ガイドブック 8地域」
- 国土交通省「建築物省エネ法第10条 省エネ基準適合義務の対象拡大について」
